食後なのに犬や猫が「もっと食べたい」と欲しがる理由と対処方法
ワンちゃんでもニャンちゃんでも、食事を与えたばかりなのに「もっと食べたい」とアピールしてきて飼い主さんを困らせることありますよね。足りないのかと思って与えてみたら、吐いてしまったなんて経験のある飼い主さんもいるかと思います。
なぜ犬や猫は満腹を超えてもまだ食べようとするのでしょう?しつこくおかわりを求められたときに、飼い主さんはどう対処すべきなのでしょう?ここではワンちゃんやニャンちゃんが食後なのに「もっと食べたい」と欲しがる理由と対処方法についてご紹介します。
目次
適正な食事量の目安
ワンちゃんやニャンちゃんが満腹なはずなのに、まだ食べたがる理由やそのときの対処方法を知る前に、まずは適正な食事の量について理解しておきましょう。犬と猫それぞれ、どれくらいの量を食べるのが理想なのか説明します。
犬の適正な食事量
犬の適正な食事量は、子犬や成犬などの成長ステージによって変わります。一般的な食べる量としては下記のような計算式が当てはまるとされています。
離乳食を食べている子犬:(体重kg × 75×2) ÷ 1.1
6か月から12ヶ月までの子犬:(体重kg ÷ 40) × 1.2
成犬:体重kg ÷ 40
妊娠中:(体重kg ÷ 40) × 1.15
出産時期:(体重kg ÷ 40) × 1.6
産後:(体重kg ÷ 40) × 2
例えば5kgの成犬に適正な食事量は、「5 ÷ 40 = 125g」ということになります。ただし、これはあくまでも理想とされる食事量であって、実際には犬ごとに最適な食事量は違います。とはいえ、まずはこの食事量を目安にしておきましょう。
また、カロリーは体重1kgあたり50~110kcalですので、5kgの場合は250~550kcalが適正となります。もちろんこちらも目安程度に考えておきましょう。そもそも250kcalと550kcalでは倍以上違いますので、太りすぎたかなと感じたらカロリーを抑え、痩せてるなと感じたら増やすくらいに考えておきましょう。
猫の適正な食事量
成猫の場合は1kgの体重に対して80kcalが理想とされています。そこから計算すると、100gあたりのカロリーが390kcalのキャットフードの場合、1kgあたり20gの食事量が基本となります。3kgのニャンちゃんなら60gが理想ということになります。
ただし、これは運動の多い成猫の場合で、室内飼いの場合や成長期、老猫の場合などで適正なカロリーは変わってきます。
運動の多い成猫:1kgあたり80kcal/日
運動の少ない成猫:1kgあたり70kcal/日
成長期の子猫:1kgあたり100~200kcal/日
老猫:1kgあたり60kcal/日
適正な1日の食事量はここから逆算してください。計算式は下記のようになります。
食事量 = 体重 × 1kgあたりに必要なカロリー ÷ キャットフード100gのカロリー ÷ 10
例えば当店で取り扱っているプレートキャットワンは100gあたり395kcalですので、運動の少ない3kgの成猫の場合は次のようになります。
1日の食事量 = 3kg × 70kcal ÷ 395kcal ÷ 10 = 53g(0.053kg)
犬の食事量とは導き方が違いますが、適正な食事量を知るためには面倒でもきちんと計算するようにしましょう。キャットフードのパッケージにも最適な食事量の記載がありますが、幅をもたせて記載されていることが多く、具体的な量がわからないこともありますので、そのときにはこの計算式を活用しましょう。
食後なのになぜ食べたがるのか
適正な食事量が分かれば、自分が与えている量が合っているのかどうかが把握できたかと思います。与えすぎていたという人もいれば、全然足りなかったという人もいるかと思います。後者の場合は、単純に与えるフードの量が足りていないので、食後に「足りない」とアピールしてくるのは当然です。
そのようなケースでは食べる量を増やしてあげてください。そうではなく、きちんと与えているのに「足りない」とアピールして来る場合には、他の理由が考えられます。その理由はいくつも考えられますが、代表的なものとしては下記の4点が挙げられます。
- 本能によるもの
- 丸呑みしているので満腹感がない
- ストレスによる過食
- 病気になっている
これだけでは理解できないかと思いますので、それぞれの理由についてもう少し詳しく見ていきましょう。
本能によるもの
ワンちゃんもニャンちゃんも、本来は野生の動物です。野生動物はいつでも食事ができるわけではありませんので、食いだめする習慣があります。しっかりと食べておかないと、次はいつ食事にありつけるか分からないためです。
適量の食事というのは飼い主がきちんと食事を与えるから適量になるわけですが、犬や猫にしてみれば「次に必ずもらえるとは限らない」と本能的に考えてしまいます。そうなると「適量よりはもう少し食べておきたい」という本能が働き、「足りない」となるわけです。
適量の食事というのは、肥満にならず、痩せすぎることもない量ですので、人間でいう腹八分目の状態にあるというのも影響します。わたしたちも腹八分目は「足りない」と感じますよね。ワンちゃんやニャンちゃんには健康意識なんてものはありませんので、「足りない=もっと食べたい」になって当然ですよね。
丸呑みしているので満腹感がない
犬や猫の食事風景を見ると、人間のように口の中で咀嚼せずに、ほぼ丸呑みの状態になっているのが分かると思います。実際には丸呑みではなく、きちんと奥歯で噛んでいるのですが、犬も猫も基本的には早食いですので、飼い主さんからしてみると丸呑みしているように見えます。
この早食いや丸呑みの状態というのは特に悪いことではありません。何度も噛んでから飲み込む人間が特殊なのであって、自然界においては珍しいことではありません。でも、満腹感という意味では早食いや丸呑みはマイナス要因となります。
犬や猫は満腹中枢の働きが鈍く(これも野生時代の名残り)、そこに早食いが重なるため、食べても満腹感を得られないため「もっと食べたい」となるわけです。
ストレスによる過食
ストレスも食事の量に影響を与えます。ワンちゃんやニャンちゃんによっては食欲が落ちることもありますが、そこは人間と同じで、軽度なストレスの場合には食べてストレスを発散しようとします。飼い主さんがあまり遊んでくれなかったり、長時間お留守番をさせたりしたときに過食になりがちです。
食後におねだりするときは、その日にストレスを与えるようなことをしていないか振り返ってみましょう。近所で工事が始まったタイミング、引っ越し直後などの生活環境の変化なども見逃さないようにしてあげましょう。
病気になっている
病気になって食欲が増えるケースもあります。病気になったら食欲は減るものでは?そう思うかもしれませんが、病気の種類によってはむしろ食欲が増すこともあります。例えば下記のような病気の場合には食欲が増える傾向にあります。
- 甲状腺機能亢進症
- 糖尿病
- 認知症
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで発症する病気です。犬よりも猫のほうがかかりやすい病気ですが、動きが活発になったり食欲が増したりするため、病気というよりは元気になったように見えますが、体が痩せて毛艶も悪くなっていきます。
糖尿病も食欲が増す病気のひとつです。糖尿病の初期には血液中のブドウ糖を処理するためにインスリンが多く分泌され、それによって食欲が増します。犬や猫は人間のように理性で自分を制御しきれないため、「食べ過ぎだからもうやめておこう」となりません。食欲が増せば、すぐにまた食べたいとなるわけです。
また、老犬、老猫になってくると、人間と同じように認知症になることがあります。認知症になると食べたという記憶がなくなりますので、食事をした少し後に「まだ今日は食べてないけど」という感じでねだってくることになります。
このように病気で食欲が増すワンちゃんやニャンちゃんがいますが、それと同時に体や行動に何らかの異変が見られます。おかしいなと感じたら、すぐに動物病院などで主治医に診てもらいましょう。
必要以上におねだりするときの対処方法
適正な食事量を与えているのに、「まだ食べたい」とアピールしてきたとき、飼い主さんはどのように対処すべきなのでしょう?おねだりされたときの、正しい対処方法について、詳しく説明していきます。
基本は絶対におかわりを与えないこと
まず、基本スタンスはおかわりを与えないということです。明らかに食事が少なかった場合は別ですが、きちんとした量を与えているときにそれ以上食べさせる必要はありません。「かわいそう」と思ってついつい与えてしまう飼い主さんもいますが、それで肥満になる方がかわいそうです。
おねだりをしてもらえると分かると、次からもまたしつこくおねだりをしてきます。どうやっても次の食事まではもらえないということを覚えさせるためにも、おかわりをおねだりしてきたときには絶対に与えないという強い意志をもって対応してください。
早食い防止用の食器を使う
おねだりを止めさせるには、やはり満腹感をしっかりと与えてあげるということが大事です。そのためには、食事をゆっくりさせるようにしましょう。もちろん「ゆっくり食べなさい」と言っても聞いてくれませんので、早食い防止用の食器を使ってみてください。
ペットショップやネットショップには、沢山の種類の早食い防止食器がラインナップされています。1種類だけですとすぐに慣れてしまいますので、2~3種類をローテーションしながら使ってあげましょう。ゆっくり食べるようになれば、これまでのようにおかわりをねだる回数が減ってきます。
低カロリーのフードに切り替える
量が少ないから満足できないのであれば、量を増やしてあげましょう。このとき大事なのは与えるカロリーの量を変えないということです。摂取カロリーが変わらなければ、肥満になることはありませんので、低カロリーのペットフードを選び、量をたくさん与えるようにしましょう。
ただし、与え過ぎは内臓への負担も大きくなってしまいますので、通常の1.1~1.2倍の量を与えるようにカロリー調整を行いましょう。ドッグフードやキャットフードの切り替えが難しい場合には、おからや野菜などでかさ増ししてあげるのもおすすめです。
おからは筋肉を作るのに重要なタンパク質が豊富ですし、野菜はビタミンを摂取できます。当店で取り扱っている魚ベースのドッグフードやキャットフードもカロリー摂取を抑えられますので、しっかり食べさせたい飼い主さんにおすすめです。
まとめ
愛犬や愛猫に「もっと食べたい」とねだられると、ついつい必要以上に与えたくなるのが飼い主さんの親心ですよね。でも、適正な食事量を与えているのであれば、それ以上食べさせるのは肥満を招いてしまいます。肥満になると食事制限が必要になりますので、とてもつらい思いをさせることになります。
もちろん、フードが不足するというのは絶対に避けなくてはいけないことですので、足りないよりは多いほうがいいので、本当に足りているのかというのは、常に気をつけておく必要がありますが、体重が減っていないのであればそれ以上与えなくても問題ありません。
「食べたい」と「必要」が必ずしも一致するわけではないということを頭に入れて、常に最適な量を与えるようにしましょう。ただ、低カロリーのフードを選んでたくさん食べさせるという方法もありますので、満腹感を与えたい人はここでご紹介した内容を参考にして、肥満にならないように気を使いながら、たくさん食べられるようにしてあげましょう。